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第2版まえがき

本格的にコーパスを活用した国内初の学習英和辞典として2002年に『ウィズダム英和辞典』が発刊されて以来, 様々な分野のユーザーの方々から予想以上の反響をいただいた. この度, ユーザーの方々から寄せられた貴重なご意見やご要望を取り入れるとともに, 発刊以来の英語の変化をいっそう的確に内容に反映すべく, 改訂版を上梓することとなった. 

編集にあたっては, 初版同様以下のような点に留意した.

 

 1 使用頻度の重視

語義配列や用例の提示を使用頻度順にし, 頻度の高い語義や用例ほどすぐに見つけることができるよう配慮した. また, 高頻度の語義項目は説明や用例を増やし, 特に, 基本語は詳細で包括的な記述を心がけた.

 

 2 きめ細かな語法分析

ネイティブスピーカーが無意識のうちに行っている言語活動を客観的に分析し, 日本人英語学習者が英語を発信する際に必要となる十分な語法情報を与えた. 日本語の類推などにより生じる語法上の誤りに関しては, 誤文訂正情報を積極的に示し, 最難関校の入試問題やTOEIC・TOEFLなどの問題にも対応できるよう配慮した. また, 従来のような○×式の単純な正誤情報にとどまらず, 誤りとは言えないがどの形がより普通かといった, 平均的な英語を意識した相対的注記も与えた. 動詞・形容詞・前置詞がどのような名詞と用いられるか, 副詞がどのような動詞と用いられるかといった選択制限表示や連語情報を可能な限り具体的に表示した.

 

 3 生活英語の重視

学校教育でのオーラルコミュニケーションの重視, 急増する海外留学, インターネットの普及に代表されるグローバルな社会情勢など, 日常生活を生き抜くための英語が必要とされる状況をふまえて, これまで扱いが不十分であった日常生活語彙の充実を図った. 特に, 日常会話でよく用いられる定型句については, 語用論的解説を添えて積極的に採用した. また, 日常会話で多くの割合を占めるものの日本人英語学習者が不得意な句動詞についてもスペースの許す限り発信に必要な情報を示した. 用例に関しては高尚で文学的なものに偏ることを避け, 実際の生活に根差した実用的用例を与え, 特に高校生にとって分かりやすく, また使いやすい用例を目指した.  

 

 4 使用域レーベルの吟味

英語の言語直観の働かない英語学習者でも安心して状況に応じた適切な英語を使うことができるように, きめ細かく実態に即した使用域レーベルを表示した.その際, 20パーレン開きくだけて20パーレン閉じ20パーレン開きかたく20パーレン閉じ, 20パーレン開き20パーレン閉じ20パーレン開き20パーレン閉じ を始めとする直感的でわかりやすいレーベル表示を行うよう配慮した.  

 

 5 各種コラムの充実

楽しく興味をもって英語を学習できるよう, 語法, 類義, 表現, 事情, 関連, 語源 など, 多角的な視野からの各種コラムを充実させた.  

 

 6 豊富な新語・新語義

コンピュータやインターネットを始め, 時事・技術革新・スポーツ・音楽関係の用語, 視覚方言や押韻俗語など, 急激な変化を迎える時代の英語を扱うのに必要な新語・新語義を収録した. 本改訂版でも, wiki, civil union, fat tax, organic electroluminescenceなど, 各種分野について増強した.  

 

 7 最新の研究成果に基づく発音表示

現在最も普通に行われている発音を示した上で, 使用域に応じた主な変異形を示した. 日本語の類推から誤りやすい発音や旧来の発音指導とは異なる形が新しく一般化している事例には, 具体的に注記を加えた.また, 改訂版では, 新たに以下のような新機軸を盛り込んだ.  

 

 8 派生語表示

原則としてBランク以上の見出し語項目には, 各品詞の記述の前にCランク以上の派生語を品詞とともに列挙した.  

 

 9 コーパス分析の結果を見やすい形で提示

興味をもってかつ効率的に学習を行うため, 各見出し語の周辺に現れる語句を頻度順に示した コーパス頻度ランク や, 発信の際の道しるべとなる情報をまとめた コーパスの窓 を新設した.  

 

 10 発信・受信を強力支援

各見出し語が日常生活で典型的に用いられる場面を具体例で再現する コミュニケーション, 日本人英語学習者が誤りやすく各種試験でもねらわれやすい文法・語法事項を具体例で示す 作文のポイント, 英文を読み解く際にカギとなるつなぎ言葉と論理展開の型を詳説する 読解のポイント を新設した.  

本辞典の編集は, 冒頭でもふれたように初版にも増して多くの方々のご協力を得て行われた. 心よりお礼申し上げたい. また, 三省堂出版局, 特に外国語辞書第一編集室の方々にはお世話になった. さらに, 厳しいスケジュールの中で, 印刷・製本作業を担当された三省堂印刷の方々にも感謝申し上げたい. 最後になったが, 終始最高のチームワークで編者らを助けてくださったお二人の優秀な編集者, 西垣浩二氏と坂本淳氏にお礼申し上げる次第である. 最後の最後まで編者らのわがままな希望に三省堂印刷と連携しながら応じてくださった.  改訂作業に際しては十分注意したつもりではあるが, 思いがけない誤りや不備もないとは言えない. ご利用いただいた皆様からのご意見・ご助言を賜れれば幸いである.


 2006年10月
井上永幸 赤野一郎